人類が二足歩行を獲得してからというもの、腰痛は人類の宿命疾患となってしまいました。利便性と引き換えに痛みを得てしまったのは幸か不幸か。
今回は、そんな我々人類が日常的によく遭遇しがちな
「腰の痛み」
について勉強してみましょう。単なる筋肉性の腰痛から内臓疾患による腰痛まで、腰痛には様々な原因疾患が存在しています。
腰の痛みの際には「何科」を受診したら良いのか、症状ごとにどういった原因が考えられるのか、そういった点を中心に考えてゆく事にしましょう。
どうぞ最後までしっかりと読んで頂ければ幸いです。
目次
①腰の痛みの種類
腰痛でどこを受診するのかを決める前に、まずは「腰の痛みの種類」についてよく勉強しておきましょう。
一口に腰の痛みと言っても、実は様々な原因疾患が存在しているのです。
ぎっくり腰や慢性腰痛
これがもっとも私たちに身近な腰痛でしょう。
いわゆる「筋肉性」の腰痛で、「ぎっくり腰」は急激に筋肉が縮んで固まった状態、「慢性腰痛」は緩やかに筋肉が縮んで固まっている状態です。
たいていは大過なく経過してゆくのですが、まれに「寝たきり」のような酷い腰痛に進展してゆく方もあるので、油断は禁物です。
特に「ぎっくり腰」の初期対応はかなり重要です。詳しくは以下の記事をご覧ください。
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症
これは背骨の腰椎などの「骨」付近に原因がある疾患です。椎間板ヘルニアも脊柱管狭窄症も、発症の原理や症状の経過はほとんど一緒です。
大多数の方が経験するような腰痛ではありませんが、一度経験すると、人によっては「トラウマ」になってしまうぐらい辛い症状でもあります。
「椎間板ヘルニア」は比較的若い世代から中年期に多く、「急激な痛み・脚のしびれ・運動麻痺」などを伴う疾患です。
「脊柱管狭窄症」は比較的高齢者に多く、「慢性的な痛み・脚のしびれ・運動麻痺」などを伴う疾患です。
現代医学では、これらの疾患の原因は「脊髄の圧迫」にあるという理解が一般的ですが、実はそれには誤解もあるのです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
「椎間板ヘルニアは手術すべきか!?ズバリその判断基準とは!」
腰椎圧迫骨折
こちらは主に高齢者の女性に多発する疾患です。
骨粗鬆症を背景にした骨の弱体化が原因で、些細な外力によって背骨が簡単に折れてしまう疾患です。折れると言うよりも潰れると言った方が正確ですね。
完治までには3~6か月を要し、痛みの為に日常生活にも多大な影響を及ぼしますので、ぜひ気をつけたい負傷の1つです。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
「腰椎圧迫骨折の痛みの原因!治療法やリハビリはどうする!?」
坐骨神経痛や肋間神経痛
これはけっこうメジャーな腰痛ですね。特に坐骨神経痛は、大多数の方が生涯に一度は経験すると言われています。
実は神経痛というのは正式な病名ではなく、あくまで症状を表す言葉なのですが、世間一般では「神経痛という病気」で認識されていますね。
「坐骨神経痛」はお尻から脚にかけて痛みが起こる状態、「肋間神経痛」は胸から脇腹にかけて痛みが起こる状態です。
坐骨神経痛は比較的緩やかに発症し、肋間神経痛は急激に発症するケースが多いように感じます。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
なお1点だけ気を付けて頂きたいのは、「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」の痛みと間違えやすいという事です。昔で言うところの「胴巻き(どうまき)」ですね。
坐骨神経や肋間神経は「帯状疱疹の好発部位」です。放っておくと難治性の帯状疱疹となり、厄介な「神経障害性疼痛」に至る事もあります。
お尻やわき腹や背中などが痛い場合には、鏡などで皮膚をチェックして、帯状疱疹特有の「赤い水泡群」ができていないか観察するクセもつけておきましょう。
神経障害性疼痛に関しては以下の記事も参考にされて下さい。
内蔵疾患
内臓疾患からくる腰痛も侮れません。
単なる筋肉や関節の問題と考えていたら、実は内臓の病気だったというケースが結構あります。この見極めはとても大切です。例えば
「ぼうこう炎・じん臓疾患・すい臓疾患・かん臓疾患・前立腺疾患・婦人科疾患・細菌による化膿性股関節炎」など、原因となる内臓疾患は実に多岐に渡ります。
これら内臓疾患からくる腰痛に見られる特徴として
「安静にしていても痛い」
という症状が見られます。基本的に筋肉や関節系の腰痛は「動作痛」がメインなのですが、内蔵系の腰痛は「安静時痛」がメインとなりがちです。
要は、「安静にしているのにそれでも痛い」というような場合には内臓疾患の存在を疑う必要があるのです。
またその他の症状として、「発熱・血尿・吐き気・不正出血」などを伴うような腰痛の場合も、まずは内臓疾患を疑う必要があるでしょう。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
②何科を受診したら良いのか
では、こういった腰の痛みに際して「何科を受診したら良いのか」という話になりますが、受診を検討すべき医療機関として以下の5つが代表的なものになります。
「整形外科」
「内科」
「婦人科
「ペインクリニック」
「整骨院」
以上の5つが検討すべき医療機関として挙がります。次項でこれらの医療機関について詳しく考察してみましょう。
③整形外科
骨格や関節のスペシャリストである「医師」が診療を行ってくれる医療機関です。
「ぎっくり腰・慢性腰痛・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・坐骨神経痛・肋間神経痛」が疑われる場合に受診すべき医療機関です。
基本的には、「画像検査・投薬治療・注射治療・リハビリ治療」などで回復を促してくれます。
一部、関節の状態が著しく悪いような場合には「手術」になるケースもあります。特に、「椎間板ヘルニア」と「脊柱管狭窄症」では手術適用と診断される場合があります。
ただし手術の決断は少し待った方が良いかもしれません。
上記のリンク先記事でも書いていますが、実は本当に「脊髄神経が圧迫」を受けたとしたら、痛みやしびれよりも「運動麻痺」が先行するのです。
つまり、あなたの症状に「運動麻痺」が見られるのなら確かに手術適用ですが、「痛みやしびれだけで麻痺が無い」のならば、リハビリでも回復できる可能性が充分あるのです。
この件については、私も参加している「MPS研究会」の会長である「加茂整形外科」さんのHPやブログをぜひともご参照ください。
④内科
内臓疾患のスペシャリストである「医師」が診療を行ってくれる医療機関です。
「内臓疾患による腰痛」が疑われる場合に受診すべき医療機関と言えます。相談できるかかりつけの内科医を、普段から作っておきたいものですね。
特に、しつこい腰痛に「発熱・吐き気・血尿・腹部や背部や臀部の痛み」などを伴うような場合は、急いで受診して症状を詳しく説明すべきです。
基本的には「画像検査」や「血液検査」によって診断を下し、「投薬治療」や「専門病院への紹介」などで回復を促してくれます。
⑤婦人科
婦人科疾患のスペシャリストである医師が診療を行ってくれる医療機関です。
「内臓疾患による腰痛」が疑わる場合に受診すべき医療機関と言えます。
特に、「女性」でしつこい腰痛に「不正出血や生理不順や腹部の違和感や痛み」などを伴うような場合、勇気を出して一度受診しておきましょう。
基本的には「画像検査」や「血液検査」によって診断を下し、「投薬治療」や「専門病院への紹介」などで回復を促してくれます。
⑥ペインクリニック
痛みのスペシャリストである「医師」が診療を行ってくれる医療機関です。
「ぎっくり腰・慢性腰痛・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・坐骨神経痛・肋間神経痛」が疑われ、かつ「通常の鎮痛剤が効かない」ような場合に受診すべき医療機関です。
基本的には「投薬治療・ブロック注射治療」によって回復を促してくれます。
手術によって構造を治すような治療は基本的に行われません。神経の痛みの回路を抑えるような処置がメインとなります。
⑦整骨院
軟部組織(筋肉やじん帯や腱)のスペシャリストである「柔道整復師」が施術を行ってくれる医療機関です。
「ぎっくり腰・慢性腰痛・椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症・坐骨神経痛・肋間神経痛」で、整形外科もちゃんと受診しているが症状がまだ残っている場合に受診すべき医療機関です。
医師ではありませんので投薬治療や手術治療などはありません。基本的には「手技療法・運動療法・物理療法」などによって回復を促してくれます。
軟部組織に関しては、ある意味医師よりも詳しい先生もたくさん居られますので、整形外科のリハビリでは改善が見られない場合には頼りになる存在です。
以上。腰の痛みは何科に行けば良いかという話でした。
腰痛は、実にいろいろな疾患の症状として顔を出してきます。その中には、案外重大な内蔵疾患などが隠れていることもあるのです。
ぜひ今回の記事を参考にして頂いて、腰の痛みに早期に対応するようにされてくださいね。
まとめ
*腰痛には、ぎっくり腰、慢性腰痛、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、坐骨神経痛、肋間神経痛、内臓疾患等がある。
*腰の痛みで受診するなら、整形外科、内科、婦人科、ペインクリニック、整骨院が選択肢。
*重大な疾患が隠れていることもある。勇気を出して早めに受診しよう。