梅雨時や寒い時期には

 

「腰が痛い」

 

と言って治療院に駆け込んでくる患者さんと、毎日のように遭遇します。

 

しかし、一口に腰痛と言ってもその原因は様々です。直ちに検査や処置を行わなければならない場合もあれば、とりあえずは様子見で良いような場合もあります。

 

仕事をされてる方などは、忙しい中わざわざ病院等に行くのは簡単じゃありませんし、急ぐ必要のない腰痛ならば、とりあえず自宅で様子を見たいという方も多い事でしょう。

 

「すぐ病院に行ったほうが良いのかどうか」

 

を自分で判断するには、一体どんな症状に注目すれば良いのでしょうか。

 

実は腰痛については、検査や治療の必要性を判断する基準というものが存在しています。

 

今回は、「日本整形外科学会」が提唱している「腰痛診療ガイドライン」から要点をかいつまんで、そのあたりの見解をご紹介したいと思います。

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腰痛のレッドフラッグが有るか

我々治療家が腰痛の患者さんを診た時にまず考える事は

 

「レッドフラッグ」

 

の存在です。つまり、「迅速に対処しなければいけない原因」が有るかどうかの見極めです。中でも特に重要なのは

 

「重篤な脊椎疾患の可能性が有るか」

 

という点です。重篤な脊椎疾患とは、例えば「骨折・転移したがん・感染症・自己免疫疾患」などです。つまるところ

 

「放っておいて良くならないどころか、悪くなる可能性がある病気」

 

と言っても良いでしょう。そこで我々は、この重篤な脊椎疾患の可能性をチェックする為の基準として、以下のような「レッドフラッグリスト」を参考にしています。

 

以下のような腰痛が見られる場合は、直ちに医師の診察を仰ぐ必要があると言えます。

レッドフラッグの一例

発症年齢が20歳以下または55歳以上である。

 

時間や活動の有無によって症状の増減がない(常に一定の痛みがある)。

 

発熱症状がある。

 

胸や背中のあたりも痛い。

 

癌の持病がある。

 

HIV(エイズウイルス)に感染している。

 

ステロイド治療を行った経験がある。

 

栄養状態が悪い(食事が不適当な高齢者・酒以外を受け付けないアルコール中毒患者など)。

 

異常な体重減少(定義的には6~12か月で5%の減少とされますが、要は病的な痩せ方が疑われる場合)。

 

神経麻痺症状が見られる(急に脚に力が入らなくなった・大小便の排泄がコントロール出来ない)。

 

極度の背骨の変形。

 

これらの症状に該当する場合は、まずは優先的に「レントゲン検査」や「血液検査」等を行うべきと提唱されています。

 

レッドフラッグでは、おもに「内臓疾患」からくる腰痛の可能性が問題となります。背中や腰の痛みは、「内臓疾患」からくる痛みがけっこう多いものなのです

 

「背中の痛みは内臓の病気かも!?痛む場所で分かる疾患!!」

 

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神経根症状の有無も確認

レッドフラッグに該当する重篤な脊椎疾患の可能性を除外できたら、次は

 

「神経根症状の有無」

 

をチェックします。

 

脳から腰に向かって降りてくる「脊髄神経」は、そこから内蔵や手足に向かって伸びていく末梢神経の枝を出していますが、「神経根」とはこの末梢神経の根本の事を指します。

 

この神経根が何らかの原因で圧迫されると、末梢神経がつながっている末端の筋肉や皮膚などで、「痛みやしびれ」が出る事があるのです。それを

 

「神経根(しんけいこん)症状」

 

と呼んでいます。神経根を圧迫する原因として、若い方に多い「椎間板ヘルニア」や高齢者に多い「脊柱管狭窄症」といった疾患があります。

 

それらの疾患の場合は、より精密な検査と徹底した治療が必要となるケースが多いのです。

神経根症状の所見

腰だけでなく、大腿や下腿や足指なども痛い。

 

片側の下肢(脚)の痛みが、腰痛自体よりも強く痛む。

 

「下肢伸展挙上テスト(SLR)」が陽性である。

 

 

これらのいずれかに所見が当てはまる場合は、「椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄症」の可能性がありますので、まずはMRI検査などの精密検査を実施する必要があります。

 

ただし、MRI検査等の画像所見と患者さんの自覚症状とが必ずしも一致するとは限りません。

 

例えば「MRI検査で明確な異常が見つかった」としても、患者さんは「それほど強い痛みを訴えない」ケースもあり、またその逆のパターンもあるのです。

 

よって神経根症状があったからと言って、早急にMRIを撮る必要があるのかと言われると、必ずしもそうだとは言えない部分もあります。

 

ここは、あくまで現状の患者さんの所見を総合的に判断した結果で決めるべきなのです。

 

ただ神経根症状のような状態があれば、やはりそれなりの重傷を呈している事には間違いはないので、念のため医師の診察を受けておいた方が安心ではあります。

 

これらの詳しい見解については、以下の記事にて書いていますのでどうぞご覧ください。

 

「腰椎椎間板ヘルニアは手術すべき?ズバリその判断基準は!!」

 

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レッドフラッグも神経根症状も無い場合

レッドフラッグにも神経根症状にも当てはまらない場合、その場合は

 

「非特異的腰痛」

 

という事になります。要するに「単なる腰痛」の可能性が高いという事ですね。なので、「急いで病院へ行く必要はない」という事になります。

 

単なる腰痛というのはほとんどが「筋肉性の痛み」です。実は肩にしろ腰にしろ膝にしろ、あらゆる「関節痛」というのはたいてい「筋肉性の痛み」が多いのです。

 

上記でも書いた「内臓疾患からくる腰痛」や、「神経麻痺症状を呈している様な腰痛」では緊急性がありますが、筋肉性の痛みにはそれほど緊急性はありません。

 

「筋肉が関節痛の原因になるって本当ですか?はい本当です!!」

 

こうした「非特異的腰痛」に対しては、当面4~6週間の「保存的治療(リハビリなど)」を地道に行ってゆく事が進められています。

 

「マッサージや温熱治療や電気治療」等で根気強くリハビリを行って行く事が大切です。また、痛みが強い場合には「鎮痛剤」も上手に併用した方が回復は早まります。

 

なお腰痛は、「心の問題が原因」で起こる場合もあります。例えば「うつ病」に代表されるような心因性疾患は、往々にして体の不快症状を伴うものです。

 

ただし、安易に自分の腰痛を「心の問題」と判断するのは危険です。腰痛が心の疾患から来ているかどうかは、まずは体自体に別段異常が見当たらないという事が前提となるからです。

 

レッドフラッグはない、神経根症状もない、そしてリハビリを頑張っても改善がない。そこで、初めて心理的疾患の可能性を検討する状況になる事を忘れないでください。

 

以上。病院に行くべき腰痛の信号について話しました。

 

少し難しい内容となりましたが、要は「内臓疾患が疑われる腰痛」や、「神経麻痺が疑われるような腰痛」であるかどうかが争点となるのです。

 

もし、自分ではなかなか判断がつかないような場合は、とにかく一度医師に診察をしてもらう事をおすすめいたします。

 

そして、レッドフラッグや神経根症状が問題となるような状況でない事が分かったら、地道に「整骨院」等で筋肉に焦点を当てたリハビリに邁進してゆきましょう。

まとめ

*腰痛で病院にすぐ行くべきかの判定基準がある。

*レッドフラッグ症状がある場合は、まずは医師の診察を優先する。

*神経根症状がある場合は、優先とまでは言えないが医師の診察を受けておいた方が安心。

*レッドフラッグも神経根症状もない場合は、単なる腰痛として筋肉に焦点を当てたリハビリを行う。

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