先だって、歌手のレディー・ガガさんが

 

「線維筋痛症(せんいきんつうしょう)」

 

で闘病中により活動を休止する事を発表されましたが、あなたはこの「線維筋痛症」という疾患がどんな病態なのかご存知でしょうか。

 

私が以前書いた「神経障害性疼痛」の記事をお読みになって頂いた方の中にはおそらくご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、この疾患を一言で表すならば

 

「痛みの王様」

 

という表現が合っているように思います。

 

痛みの王様とはいったいどういう意味なのか。今回は、以前から紹介したいと思っていた「線維筋痛症」に迫ってみましょう。

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線維筋痛症

神経障害性疼痛の記事をお読みになって頂けてない方は、まず基礎知識としてそちらの記事からお読みになって頂く事をおすすめします。

 

神経障害性疼痛というのは、「脳や脊髄などの中枢神経が痛みを記憶して」しまう事で、心身がよりいっそう

 

「痛みに対して敏感になってしまう」

 

状態の事を指します。まさに痛みの悪循環のごとく次から次に痛みが押し寄せ、なかなか痛みが改善できないままに、次第にひどい状態へと移行してゆきます。

 

そんなやっかいな神経障害性疼痛ですが、その神経障害性疼痛の頂点に君臨する疾患が

 

「線維筋痛症」

 

なのです。まさに痛みの王様、いやその痛みの質を考えれば「痛みの暴君」と言ってもさしつかえないでしょう。

線維筋痛症の症状

通常、線維筋痛症の患者さんが整骨院に来院される事は少ないのですが、私は過去に数例の患者さんを診察させて頂いた事があります。

 

とにかく「辛そう」の一言です。線維筋痛症は女性に発症が多く、その痛みの特徴として

 

「鋭い痛みが流動的に移動してゆく」

 

のです。つまり、強い痛みが四六時中つきまとうのに加えて、その痛みは決して1か所に止まらずあちこちに「痛みが飛び火」してゆきます。

 

常に全身のあちこちに痛みはあるのですが、その中でも痛みの強さや場所が日に日に変化して捕えどころがないので、非常に辛いのですね。

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線維筋痛症の原因

発症の詳しい原因は解明されていません。しかし、神経障害性疼痛の記事でも話しましたが、こういった中枢神経系の痛みというものには

 

「中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)」

 

が関与しているケースがほとんどです。中枢性感作の詳しい内容については以下の記事をぜひお読みください。

 

「慢性痛の原因は脳にあり!怖い中枢性感作の存在を知ろう!」

 

簡単に言うと、脳や脊髄などの中枢神経系に「痛みの回路」が出来上がってしまう事で、よりいっそう体が痛みに対して過敏になるという現象です。

 

そして、痛みに対して過敏になる現象がピークに達すると

 

「アロディニア」

 

という状態へ移行してしまいます。アロディニアとは、正常な時には痛みと感じないようなわずかな刺激に対しても、体が過剰に反応してしまう現象の事です。

 

わずかな刺激に対しても体が反応してしまうので、日々体のあちこちが痛く感じてしまうという怖い状態なのです。

 

このアロディニアの極みにある状態が線維筋痛症の状態であろうと考えられています。

線維筋痛症の治療

残念ながら完全に治してしまう事は難しいのが実状です。しかし、多くの研究者の努力によって、症状を軽減させる手法が少しずつは生まれてきています。

 

詳しくは以下の記事内容を精読して頂ければと思います。

 

「神経障害性疼痛は何科を受診すべき?厄介な疾患です!」

 

線維筋痛症の治療は総力戦です。個々によってまったく反応する薬や施術が違いますので、よくそれらを見極めながら上手く症状の軽減に導いてあげる必要があります。

 

例えば、「通常の鎮痛薬・神経障害性疼痛の薬・抗うつ薬・抗てんかん薬・麻酔注射・電気刺激」など、あらゆる選択肢を用いて治療に当たらなければなりません。

 

線維筋痛症治療の目的は、「痛みを根治するのではなく痛みをコントロールする」という視点で向き合ってゆかなければいけないのです。

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線維筋痛症の予防

発症の原因がよく分かっていないので、100%予防できる手段はありません。

 

ただし多くの方の発症の経緯を診ていると、「何らかの痛みを放置したあるいは上手く鎮痛できなかった」という事から、どんどん事態が悪化してここまでたどり着いてしまう事が多いです。

 

要は、さきほども書いた「中枢性感作」の状態になってしまったがゆえに、線維筋痛症へと移行してしまったというケースが多いのです。という事は

 

「中枢性感作にならないようにする」

 

事が、線維筋痛症を予防する上でとても大事な視点となります。そして、中枢性感作にならない為に必要な事はただ1つ

 

「痛みを決して我慢しない事」

 

これに尽きます。ささいな痛みであっても、放っておいたがゆえにどんどん大きく育ってしまうという事は多々あるのです。

 

私の経験上、線維筋痛症のもっとも大きな引き金となる痛みは「交通事故によるむち打ち症」ですが、むち打ち症に限らずどんな痛みであっても、必ず早期に弱めましょう。

 

「痛み止めなんて一時しのぎ」だからと鎮痛剤を毛嫌いする患者さんや治療家も多いのですが、これは大きな間違いです。痛みの怖さがまったく解っていません。

 

将来的に線維筋痛症などの神経障害性疼痛で苦しみたくないのであれば、絶対に

 

「痛み止めやブロック注射を使用してでも痛みは弱めましょう」

 

それが最善の予防策です。痛みを弱める事や痛みを止める事は立派な治療であり、将来的に起こるかもしれない怖い病気を予防する上でも非常に重要なのです。

 

ぜひともこの点をご理解頂ければと思います。

 

以上。線維筋痛症の話しでした。

 

線維筋痛症はとても辛い疾患であり、なかなかこれといった治療法がないのが実状です。現時点では予防に徹するしかありません。

 

そのためのキーワードは「痛みを我慢しない事」です。

 

交通事故、骨折、捻挫、打撲などなど。何らかの原因で強い痛みが生じた場合には、決して甘く考えずに早め早めに手を打ってゆきましょうね。

 

なお、線維筋痛症の方が集う「友の会」があります。こちらのサイトでも詳しく解説がしてありますので、当記事と併せてご覧いただくと良いでしょう。

まとめ

*線維筋痛症は、痛みの頂点に君臨する暴君。

*線維筋痛症の痛みは、非常に激しい上に移動するのでとても辛い。

*線維筋痛症の原因は詳しく解明されていないが、中枢性感作が大きく関与している。

*中枢性感作が重症化してアロディニアの状態に移行すると、発症の危険水域。

*線維筋痛症を根治する事は難しい。痛みをどうコントロールするかが重要。

*線維筋痛症になりたくなければ、中枢性感作の状態にさせない事。

*中枢性感作にさせない為には、決して痛みを我慢し続けない事が重要である。