前回は「急性中耳炎」の話をしましたが、今回は痛みが出ない中耳炎の話です。
「滲出性中耳炎」
あまり聞き慣れない中耳炎だと思いますが、遭遇する頻度は結構高いですよ。
ただ、私の子どもも何度か罹患したのですが、発見がとても難しい疾患なのです。
何故かと言うと、「痛みも無く聞こえが悪くなるだけ」なので、一見すると病気のようには見えないからです。
しかし、放っておくと大変な事態にもなりかねない疾患ですから、親としてぜひ今回の疾患も知っておいてくださいね。
今日は、「滲出性中耳炎」の話です。
①滲出性中耳炎
急性中耳炎では中耳腔に炎症が起きる病態でしたが、「滲出性中耳炎」では中耳腔に液体が貯留する病態です。
主に乳幼児や学童期によく見られますが、大人でもけっこう見られるので油断は出来ません。
この液体は浸出液や貯留液と呼ばれ、サラサラしたものからネバネバしたものまで、発症原因により様々な状態で発生します。
原因はこれといって断定出来ませんが、「急性中耳炎の治りが悪くて移行」したり、「鼻の病気などで耳管の働きが悪く通気性が確保できない場合」などに、発症するケースが多いようです。
通常外から伝わってきた「音」は、鼓膜から中耳の耳小骨を経由して内耳へと伝わっていきますが、液体が貯留している為に、鼓膜や耳小骨の働きが上手くゆかず、聞こえが悪くなるのです。
②滲出性中耳炎の症状
「聞こえが悪い」のが主たる症状です。ちょうど、プールや風呂で耳に水が入ったような状態です。痛みは基本的にありません。
ですが、子どもは順応性が高い為に聞こえが悪い事をあまり気にする素振りを見せません。ましてや痛みもありませんから、なかなか発見が困難なのです。
ただ何となく、「聞き返す事が多くなった」とか「テレビの音量を大きくする」とか、そういった行為が目立ち始めてから、
「あれ、なんか聞こえが悪いな?」
と耳の疾患を疑い始めることで、やっと発見に至るケースが多いですね。
この疾患は割と難治性なので、治療に着手するのは出来るだけ早い方が良いです。ですから、普段からよく我が子の様子を観察しておいてほしいと思います。
③滲出性中耳炎の治療
鼻から耳へと空気を送り通気性を良くする「耳管通気」という治療が行われます。
ただし、液体の貯留が酷い場合には、鼓膜を切開して液体を排出する処置がとられる事もあります。
また、再発を繰り返す場合には「チュービング」という治療法が行われる事もあります。
これは、穴が開いたチューブを鼓膜に埋め込み、中耳腔が常に外気と触れる状態を作り出し、中耳腔の液体が外へ排出されやすい環境を作る治療法です。
実は、私の子どもはこの治療法を何度か行いました。
数か月は入れたままの状態が続きますので、プールなどの水遊びを控えさせるのが大変でしたが、おかげでみるみる症状は改善して行きましたね。
チューブ抜去後は、「鼓膜穿孔」といって鼓膜に穴が開いた状態がしばらく続くので、ちゃんと穴が塞がるのか大変心配しましたが、今はちゃんと穴も塞がり、日常生活には何の問題もありません。
とにかくこの疾患は、いかに親が早く気付いて治療を早期に受けさせるか、ここにかかっていると言えるでしょう。
以上。滲出性中耳炎は再発率も高く、あまり放置すると「慢性中耳炎」という厄介な病気へ移行する場合があります。
かなり根気のいる疾患ですが、しっかりと最後まで治療を行い、経過観察を日々怠らないようにしましょう。
まとめ
*滲出性中耳炎は、中耳腔に液体が貯留する病態。
*耳の聞こえが悪いのが主たる症状。痛みは基本的に無い。
*急性中耳炎の未完治や、鼻の調子が悪い子どもに多い。
*治療法は確立されているが、再発率も結構高い。
*いかに早く異変に気付き、早期に治療を開始できるかにかかっている。